円形脱毛症のトピックス2022.8.12 更新
円形脱毛症の治療薬として2022年6月、オルミエント®という飲み薬が認可されました。重症の多発型、全頭型、汎発型に対して適応があります。そのほかに中等症以上のアトピー性皮膚炎を合併している患者様にはデュピクセントという注射薬が使用可能です。薬剤費は高額ですがお勧めの治療薬です。
オルミエント®
細胞内のヤヌスキナーゼ(JAK)というたんぱく質を阻害します。これによりサイトカインの働きが抑えられることで免疫細胞による毛根への攻撃が抑制され、円形脱毛症に効果を発揮します。以前より慢性関節リウマチ、アトピー性皮膚炎に対しての効能は認められていていましたが、この度、円形脱毛症に対しての効能が追加承認されました。
<さらに詳しく>
オルミエント®はアトピー性皮膚炎に対してデュピクセント®に次いで効能が追加された飲み薬です。細胞内のヤヌスキナーゼ(JAK)という酵素を阻害することで、アトピー性皮膚炎の病態形成にかかわるTh2細胞というリンパ球のIL-4、IL-13、IL-31などの働きを抑えることでアトピー性皮膚炎の症状を緩和しますが、円形脱毛症においてはTh1細胞を制御することで効果を発揮すると言われています。2022年6月20日に円形脱毛症に対して効能が追加されましたが、罹病期間が6か月以上であり、脱毛範囲が概ね50%以上で、15歳以上の患者様が適応です。効果は9か月後に全頭の脱毛範囲が20%以下になる確率が約35%と報告されています。ただし、副作用はステロイド全身投与ほどではないにしても、ある程度注意が必要で、結核やウイルス性肝炎などの感染症がないことを詳細に検査してから開始する必要があることと、定期的な検査が必須です。したがって、副作用の観点から65歳以上の患者様にはお勧めしていません。また、円形脱毛症が完治するわけではなく、投与を中止すると再発すると言われていることは知っておかなければなりません。
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デュピクセント®
デュピクセント®はアトピー性皮膚炎に対して効能が認められた注射薬です。
皮膚内部に起きている炎症反応を抑えることによって、かゆみや皮疹などの皮膚症状を改善します。2週間に1回皮下注射を行いますが、慣れてきたら自己注射も可能です。中等症以上の円形脱毛症を伴うアトピー性皮膚炎の患者様にデュピクセントを使用することでアトピー性皮膚炎の症状のみならず、円形脱毛症に対しても有効であることが報告されています。
<さらに詳しく>
デュピクセント®は「IL-4」と「IL-13」といった白血球から放出される炎症物質(サイトカイン)の働きを直接抑えることで、皮膚の炎症反応(Th2リンパ球による炎症)を抑制する新しいタイプの注射薬です。皮膚内部に起きている炎症反応を抑えることによって、アトピー性皮膚炎のかゆみや皮疹などを改善します。2週間に1回皮下注射を行いますが、慣れてきたら自己注射も可能です。中等症以上の円形脱毛症を伴うアトピー性皮膚炎の患者様にデュピクセントを使用することでアトピー性皮膚炎の症状のみならず、円形脱毛症に対しても有効であることが報告されています。副作用が少ないので長期にわたって使用できるメリットがあります。現状では12歳以上が適応ですが、今後6か月以上の適応拡大になる見通しです。
Harada K, Irisawa R, Ito T, Uchiyama M, Tsuboi R.:The effectiveness of dupilumab in patients with alopecia areata who have atopic dermatitis: a case series of seven patients, Br J Dermatol. 2020 Aug;183(2):396-397.
医療費について(付加給付制度と高額療養費制度)
デュピクセント®、オルミエント®とも薬剤費はとても高額です。
お勤めの会社によっては付加給付制度といって独自の自己負担上減額を設定している場合があります。
ご自身が加入している健康保険組合にご相談ください。また、年収によっては、国が定める高額療養費制度の利用が可能です。最寄の役所にお問い合わせください。